SMALL.

　nca | nichido contemporary artは、小さいスケールの表現のみにフォーカスした小品展「SMALL.」を開催。日本とアジアで活動するアーティスト、ブスイ・アジョウ、黃品玲（ピンリン・ホワン）、デュサディー・ハンタクーン、石塚隆則、劉致宏（ジーホン・リュウ）、ジャン=リュック・モーマン、タミー・グエン、坂本和也、タワン・ワトゥヤの9名を迎える。

　遊牧少数民族「アカ族」の職人の家に生まれ、一族の伝統文化や風習、歴史の痕跡を絵画や立体に表そうと試みているブスイ・アジョウ、自身の体験や記憶を断片的に描きとめたスケッチブックをもとに、風景画を描く黃品玲（ピンリン・ホワン）、個人と集団とが交わる点を強調したドローイングや立体の小品を手がけ、時にシュールな形態が純真な子供の描く絵を想起させるデュサディー・ハンタクーン。

　実在しない奇妙な小動物を登場させ、コミカルかつシニカルで独特な世界を表現する石塚隆則、日常生活や周囲の環境、また旅先で見た風景や事象を一瞬で切り取り、絵画に表す劉致宏（ジーホン・リュウ）、パブリックスペースや美術館内を覆い尽くすような大規模なペインティングで一躍注目を集めるジャン=リュック・モーマン。

　インドシナ難民の娘として育った自身のアイデンティと記憶をもとに、人為的戦争によってもたされるディアスポラ（移民）やテロの問題に焦点を当てるタミー・グエン、生態系の構成要素のなかに現代の社会環境との類似性を見出し、植物をモチーフとして物事の内面を表そうとする坂本和也、水彩によるポートレイト作品を通し、自国タイで続く政治的混乱や民族間の紛争、社会的ヒエラルキー、外見の重要性などを鋭く批判し、現代人が持つ固定観念や矛盾を投げかけるタワン・ワトゥヤ。

　9名のアーティストはこれまでに国際展や美術館で大規模な作品やインスタレーションを手がけ、作品の大小に関わらず、大きな空間での展示をつねにイメージしながら制作を行ってきた。小さいながらも各々が持つ強烈な存在感は従来の枠を超え、鑑賞者の想像力に働きかける。