EXHIBITIONS

柏原由佳「1:1」

柏原由佳 Dog Day l 2020

柏原由佳 Pineapple Day 2020

 ポーラ ミュージアム アネックスでは、ベルリンを拠点に活動する若手アーティスト・柏原由佳の個展「1:1」を開催する。

 柏原は1980年広島県生まれ。2006年に武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業し、渡独。12年には「VOCA展」で佳作賞と大原美術館賞を受賞する。同年、ポーラ美術振興財団在外研修員としてドイツにて研修。13年にライプツィヒ視覚芸術アカデミーを卒業後、15年に同アカデミーでAnnette Schröterに師事しマイスターシューラーを取得した。現在、ベルリン在住。

 本展では、柏原がつくり出す、透明性と濃密さが共存した生命力あふれる作品世界を紹介する。

 柏原の絵画制作は、西洋の伝統的な絵画技法に基づき、半油性下地を独自の配合で混ぜ合わせてキャンバスに塗りこむ作業から始まる。そこで出来上がったオリジナルのキャンバスの上に、油絵具を日本画のように薄く溶き、同時にテンペラ絵具も用いながら描いて独特な深い色彩を表す。

 また柏原の作品には、現実の景色と内なる想像の空間がゆるやかに編み込まれて存在する。その背景には、日本を離れ渡独して制作を続ける作家の、内と外の「距離」への興味が介在していると言える。

 ドイツと日本の物理的な距離、それぞれの文化間での精神的な距離、そして日本人としての自分とドイツにいる自分との距離。それは柏原が作品で繰り返し取り上げる、洞窟や穴、山、湖といったモチーフを、内省的な思索をシンボリックにあらわすものへと昇華し、大地に潜む根源的な自然のエネルギーをも喚起させる。