EXHIBITIONS

宮田雪乃「うなずき」

2021.01.16 - 02.14

宮田雪乃 聞いてます 2020

 ドライポイントの手法で版画作品を手がけるアーティスト、宮田雪乃の個展「うなずき」がLEESAYAで開催される。

 宮田は1986年三重県生まれ。京都市立芸術大学大学院を修了後、主に京都で制作・発表を続けてきた。その作品は一見、アクリル画のように色鮮やかで、ドローイングのように軽快な印象だがすべて版画。版画技法のなかでも凹版画に分類されるドライポイントを用い、主に塩ビ板を彫り、プレス機でイメージを刷る。塩ビ板は、刷る際の圧力に弱いため数多く制作できないいっぽう、木版画や銅版画に比べてインクの発色が良く、独特なにじみが特徴だ。

 宮田は作品を通して、自身の「理想の町」をつくる。実際に存在しない風景や状況を可視化していくにつれ、ある時、それは自身が生まれ育ったふるさと・三重の景色だったことに気づいたという。眩しい思い出も、若かりし日の淀んだ感情もすべて、逃れられない自身の一部として、根深く存在していることを改めて自覚し、受け入れ、「ふるさと」をテーマに作品制作を続けてきた。
 
 そんななか、近年の度重なる天変地異や気候変動は、宮田の作品制作に大きな影響を与えている。揺るぎなく存在し続けていた自身のふるさともいつか消えてしまうのではないか、という思いを抱き、その不安や動揺を払拭するように、作品制作に取り組んだ。可視化し固定化することで、ふるさとという「理想の町」は作家のなかでより大きな存在へと変貌している。

 本展は作家にとって東京での初個展。歴史的な災害・伊勢湾台風を経験した三重県に生まれ、不規則に大水が押し寄せることへの自らの不安を収めるように、花瓶や壺をともに配した作品を展示する。