寺内曜子展

　言葉の曖昧な意味を思考する美術家・寺内曜子の個展が、静岡のふじ・紙のアートミュージアムで開催されている。

　寺内は1954年東京都生まれ。78年に女子美術大学美術研究科を、81年にセントマーティンズ美術学校彫刻アドバンストコースを修了し、ロンドンで作家活動を行う。99年に帰国。近年のグループ展に、「引込線／放射線」（第19北斗ビル、埼玉、2019）、「MOTコレクション：ただいま／はじめまして」（東京都現代美術館、2019）、「From the Kitchen Table」（Herbert Reid Gallery UCA、イギリス、2018）などがある。

　寺内はこれまで、表裏、内外といった当たり前と見なされている対立項の解消、それを支える二元論への疑問を、素材から必然的になるかたちの彫刻作品や、「部分しか見えない」状況のインスタレーションで提示し続けてきた。

　普段見えている面を表と呼び、見えない面を裏と言う。しかし、その基準はどこにあるのか。寺内は言葉の持つ曖昧な意味を疑い、価値判断がどこにあるのかを思考し、表現。作品を通して私たちが生活のなかで当たり前に思い込み、使用している言葉に疑問を投げかける。

　本展では、ミュージアムの空間と大きな1枚の紙が合体した作品を会場内で制作。鑑賞者は作品に取り込まれ、自らの価値判断の曖昧さに気づかされることになる。