EXHIBITIONS

笠間と益子の急須展

鯨井円美 笠間土茶注・湯呑 2020

若杉集 大津沢ボクリ土焼締急須 2019

黒田隆 常陸白泥急須 1975-77

 茨城県陶芸美術館のテーマ展の今回は「笠間と益子の急須展」を開催。笠間、益子の作家による急須作品に焦点を絞って紹介している。

 胴、注ぎ口、取っ手など数多くのパーツからなる急須は、日用品でありながら、やきもののなかでもとくに複雑な構造をもつ。手のひらにすっぽりと収まるそのかたちには愛好者も多く、愛知県常滑市を中心に多くの作品がつくられてきた。日常のうつわづくりの盛んな笠間と益子でも、急須やポットを手がける作家が近年増えている。

 笠間と益子は山を挟んで隣接する関東有数のやきものの産地であり、江戸時代に信楽の職人によって笠間に伝わった製陶の技術が、明治時代に笠間から益子へ伝わるなど共通の歴史をもつ。このような深いつながりがありながらも、県を別にすることなどの理由から、両産地共同での取り組みを行うことがなかなかできなかった。

 しかし近年、作家同士の交流は盛んになっており、2020年には「かさましこ ~兄弟産地が紡ぐ“焼き物語”~」として日本遺産に共同で認定されるなど、両者の結びつきは深まっている。茨城県陶芸美術館では、13年の特集展示「笠間✕益子」を皮切りに、両産地の現代作家を紹介。18年の「欲しいがみつかるうつわ展 笠間と益子」では、現代のうつわ作家を一望するように取り上げた。

 本展では伝統的な作品から、従来のスタイルにとらわれない作品まで、様々な「急須」作品から、笠間、益子のうつわづくりのいまに注目する。出展作家は、(笠間)黒田隆、上林秀明、戸田浩二、山崎さおり、鯨井円美、小林真梨加、(益子)若杉集、えきのり子、笠原良子、おおむら美土里、田尾明子。