EXHIBITIONS

安田昂弘「Do the Light」

2020.12.04 - 2021.01.10

Takahiro Yasuda
2020 © Takahiro Yasuda Courtesy of VOILLD

 安田昂弘の新作個展「Do the Light」がVOILLDで開催されている。

 アートディレクター、グラフィックデザイナー、ムービーディレクターなど、多彩な顔を持ち幅広い分野で活躍する安田。そのエッジーな表現はミュージシャンやアーティストからも支持を得ており、広告やプロダクトのアートディレクション、デザインをはじめ、国内外でも作品の展示を行うなど精力的に発表をし続け、多岐に渡り活躍の場を広げている。

 安田は、コンピュータというひとつのメディアを駆使しながら、つど異なったアプローチで制作を行ってきた。研ぎ澄まされていながら遊び心のあるデザインや、シンプルで単調に見えて、複雑に組み重なった線や面は、作家自身の思考とコンピュータグラフィック(CG)としての美しさが反映され構図化されている。まるでキャンバスに絵具を重ねていくような作業を、CGという枠のなかで物質的にいかに表現するかということに挑戦し続け、そのあり方を私たちに問いかけているようにさえ感じさせる、グラフィックデザイナーとして他に類を見ない存在だ。

 本展では、新たな試みで制作された、グラフィックをベースとした平面作品約20点を発表する。

 作家は本展に向けて、過去の作品にも投影され続けていた「CGとは何か」「絵画との差は何なのか」という普遍的な疑問を抱きながら、CGとしての視覚的な刺激や表現と、絵画としての物質のあり方にフォーカスし作品を制作。最小限の要素の線、面、色彩で構成された、ただの色面が淡く発光しているかのように見える錯視を用いたCGをベースに、これまで多用してきたアクリル版や金属を使って表現することに挑んだ作品が展示される。

 安田は今作で、錯覚という不確かな現象をシンプルなグラフィックに落とし込みつつ物質的に表現することで、 私たちを試しているようにも感じることができる。「光」を根幹に考えながら、巧妙な線や形、違和感のある視覚、素材の組み合わせによって緻密に構築された作品を通して、当たり前に考えていた現実世界の尊さと、二次元の世界の曖昧さを、痛烈に問いかけ訴えている。

 自粛を余儀なくなれた2020年、本展はCGや絵画のあり方に向き合い、どのような解釈で作品をひも解き受け止められるかを考える機会となるだろう。