EXHIBITIONS

ラングランズ&ベル「キュレーターのサイン」

展示風景より

 ロンドンを拠点に活動する2人組のアーティスト、ベン・ラングランズとニッキ・ベルによる展覧会「キュレーターのサイン」が開催されている。

 ラングランズとベルはともに1978年より活動を開始。建築の設計・構造に焦点を当て、人と建物のあいだにある複雑な関係性を探求する作品で知られている。また、急速に変化する技術社会と折り合うために使われるコミュニケーションと交流に着目し、その符号化されたシステムをテーマにした作品も発表している。

 2人はある時、自分たちのスタジオのアーカイヴを整理し、アーティストとしての人生のなかでやりとりをしてきた手紙などの書類をまとめた。その時、活動初期から一緒に仕事をしてきたキュレーターのサインに目が止まり、個々が放つ特性と美しさに心を奪われたという。

 キュレーターたちの仕事と役割が時間とともに発展し、進化してきたように、コミュニケーションの方法も、手紙、ハガキ、Eメール、ソーシャルメディア、メッセージアプリと変化してきた。サインはその変化の歴史的記録、痕跡でもある。紙に書かれたただの線と見るいっぽうで、サイン一つひとつには、書き手の人格が込められている。

 本展では、キャリアを始めたばかりの若いキュレーターから、国際的に活躍する有名なキュレーターまで、「キュレーターのサイン」を集め、ひとつの作品として展示。デジタルの世界によって大きな変化にさらされているいま、美しさをもつ作品として「サイン」を熟考することで、自己と個々のアイデンティティの問題について問いかける。