EXHIBITIONS

本のキリヌキ

瑞雲庵
2020.11.21 - 12.20

入江早耶 Imagimary Moore Dust 消しゴムのカス、美術手帖 2020

黒田大スケ どげざの為のプラクティス ヴィデオ 2020

前田春日美+吉野俊太郎 Allocentric Room #3 写真 2020 Photo by comuramai

 彫刻作品に付随する「情報」に着目し、彫刻とは何かを探る展覧会「本のキリヌキ」が開催されている。参加アーティストは、入江早耶、中谷ミチコ、石黒健一、前田春日美、吉野俊太郎、ジョン・マンヨン、クリス・パウエル、黒田大スケ(本展企画)の8名。

 本展は、朝鮮戦争後の韓国で、大きな港のある釜山に作家たちが集まり、雑誌『美術手帖』などの古書から世界の美術の動向をつかんでいたという事実を起点に企画されたもの。企画者の黒田大スケは近年、東アジアの彫刻概念の伝播と拡大について、1930年代の東京美術学校の彫刻科への留学生に関するリサーチと作品制作を行い、「彫刻」が実物以上に、言語や単純化されたイメージなどの2次的な情報に置き換えられ、東アジア広域に伝わっていたことを知った。

 黒田は、こうした状況が西洋美術に対する日本の態度と重なり、雑誌や新聞などの書物に掲載された彫刻の2次的な情報が、彫刻そのもの以上に「彫刻」として受け取られ作用してきた、という見方もできるのではないかと考えている。

 本展は、「彫刻の情報(=彫刻についての文章や彫刻の写真)を彫刻ととらえることができるのか。彫刻の情報は彫刻であるか」と言う問いを起点に、アカデミズムに裏打ちされた東アジアの「彫刻」を解体し編み直す試み。近代の東アジアの彫刻の受容と変遷を手がかりに「彫刻の情報は彫刻である」という仮説を立て、遠隔的なコミュニケーションが日常化した現代における、「彫刻」表現の新しい可能性を探る。

 会場は、立体物の価値や美意識に関する導入として、ドキュメント作品やファウンドオブジェクトによる作品の展示、日本の近代的な彫刻概念の形成と、東アジア諸国への派生についてのリサーチに基づく映像作品やインスタレーション、若手作家の作品を中心に、コンピュータやインターネットが一般化した社会のなかでの「彫刻」表現の現在とこれからを問う展示の、3つのセクションで構成される。

 また会期中には、アーティストトークなどのイベントをオンラインにて配信予定。