EXHIBITIONS

カール・アンドレ

2020.11.28 - 12.26

カール・アンドレ 5 PART TALL WOOD CROSS 2017 Photo by Achim Kukulies Courtesy of the artist and Konrad Fischer Galerie

カール・アンドレ WOOD SEXTET STACK 2017 Photo by Achim Kukulies Courtesy of the artist and Konrad Fischer Galerie

 アメリカを代表する彫刻家のひとり、カール・アンドレの個展がTARO NASUで開催される。

 アンドレは1935年アメリカ・マサチューセッツ州生まれ。ミニマリスティックな彫刻やインスタレーションで知られ、その作品は彫刻の形態や空間の認識に新たな知覚をもたらす挑戦として、現代美術の歴史に重要な足跡を残す。

 アンドレの立体作品は鉄や木材などの見慣れた、また工業製品にもなりうる素材を幾何学的に組み合わせてつくられている。それは、工業化の発展がもたらした大量生産・大量消費のシステムに対するアートからの応答であり、ドナルド・ジャッドやダン・フレイヴィンらの作品とともにミニマリズム、ポスト・ミニマリズムへと移行するアートのダイナミズムを担った。

 69年に開催された歴史的な展覧会「態度がかたちになるとき(When Attitudes Become Form)」(クンストハレ・ベルン)、「アンチ・イリュージョン(Anti-illusion)」(ホイットニー美術館)のどちらにも参加したアンドレは、60年代末の美術のもっとも先鋭な問題意識を体現する存在だと言えるだろう。

 本展は、アンドレの代表作のひとつ「void」シリーズの1点や小型木彫作品、文字を用いた彫刻とも言うべきコンクリート・ポエトリーのドローイング作品など計15点により構成される。

 ギャラリーには「void(空間・虚空)」と呼ばれる、配置の中央に空白を残した鋼鉄製板の床置作品を中心に、素材である木材の存在をむき出しのまま投げ出すかのような木彫作品、言葉の意味を意図的に解釈不能にすることで文字組が見せる形態の空間性を主題に据えるコンクリート・ポエトリー・ドローイングが並ぶ。

 色彩や意味、背景となる物語といった「余剰」を徹底的に排除し、鑑賞者の知覚を通して物質と世界を直接的に接続しようと試み続けるアンドレ。現代における彫刻の意義と本質を問う、ミニマル・アートの巨匠の作品世界にふれてほしい。