EXHIBITIONS
篠田太郎「桂 KATSURA」
人間と自然のかかわりに着目する美術家・篠田太郎の新作個展「桂 KATSURA」がMISA SHIN GALLERYで開催されている。
篠田は1964年東京生まれ。造園を学んだ後に作家活動を開始。一貫して人間と自然のかかわりを深く問う作品は、ドローイング、彫刻、ヴィデオ、インスタレーションと多岐にわたり、国際的に高い評価を得ている。森美術館、ルイヴィトン財団、日産自動車株式会社などのコレクションに作品が収蔵されており、近年の主な展覧会に、さいたま国際芸術祭(2020)、Martin-GropiusBau(ベルリン、2019)、シドニー・ビエンナーレ(2016)、シャルジャ・ビエンナーレ(2015)などがある。
本展で初公開となる新シリーズ「桂 KATSURA」は、麻布のキャンバスにウサギ膠(にかわ)を引き、くるみ油をとき油として使用するなど、油彩画の基本的な素材を用いているが、私たちが見慣れたペインティングとは異なる趣をもつ。麻布のキャンバス自体が大きな余白をつくり、その余白は、端から中心部に向かって曲面を描きながら5センチほどくぼんでいる。そして中心部は平面で、抽象的な色の構成やグリッド状の線が、油絵具によって描かれている。この作品は、鑑賞者に、どの位置でどのくらいの距離から見るべきかという迷いを生じさせる。
篠田は、これらのペインティングを制作する過程で、桂離宮との関連性に行き着いた。日本における空間の概念が、一般的に言われている二次元や三次元というディメンションの考え方とは異なっていると認識している作家は、「桂 KATSURA」が、むしろ桂離宮に象徴される日本の伝統建築の要素を色濃く反映しており、時空間をひとつの系譜としてとらえるという意味において、桂離宮のもつ構造に近いペインティングだと考えている。
日本庭園の造園家としてキャリアをスタートさせた篠田は、西洋的な時空間のとらえ方に違和感をもちつつ、自分自身の時空間のとらえ方をも、それがどのように獲得されたか疑ってかかる。ペインティングを見る距離とは、私たちの様々な共通認識やその延長線上にある生活、社会、文化に基づいた身体的なリアクションでもあり、新作シリーズ「桂 KATSURA」はそれらを再考し、その前提となっているものを問い直すことから始まっている。
篠田は1964年東京生まれ。造園を学んだ後に作家活動を開始。一貫して人間と自然のかかわりを深く問う作品は、ドローイング、彫刻、ヴィデオ、インスタレーションと多岐にわたり、国際的に高い評価を得ている。森美術館、ルイヴィトン財団、日産自動車株式会社などのコレクションに作品が収蔵されており、近年の主な展覧会に、さいたま国際芸術祭(2020)、Martin-GropiusBau(ベルリン、2019)、シドニー・ビエンナーレ(2016)、シャルジャ・ビエンナーレ(2015)などがある。
本展で初公開となる新シリーズ「桂 KATSURA」は、麻布のキャンバスにウサギ膠(にかわ)を引き、くるみ油をとき油として使用するなど、油彩画の基本的な素材を用いているが、私たちが見慣れたペインティングとは異なる趣をもつ。麻布のキャンバス自体が大きな余白をつくり、その余白は、端から中心部に向かって曲面を描きながら5センチほどくぼんでいる。そして中心部は平面で、抽象的な色の構成やグリッド状の線が、油絵具によって描かれている。この作品は、鑑賞者に、どの位置でどのくらいの距離から見るべきかという迷いを生じさせる。
篠田は、これらのペインティングを制作する過程で、桂離宮との関連性に行き着いた。日本における空間の概念が、一般的に言われている二次元や三次元というディメンションの考え方とは異なっていると認識している作家は、「桂 KATSURA」が、むしろ桂離宮に象徴される日本の伝統建築の要素を色濃く反映しており、時空間をひとつの系譜としてとらえるという意味において、桂離宮のもつ構造に近いペインティングだと考えている。
日本庭園の造園家としてキャリアをスタートさせた篠田は、西洋的な時空間のとらえ方に違和感をもちつつ、自分自身の時空間のとらえ方をも、それがどのように獲得されたか疑ってかかる。ペインティングを見る距離とは、私たちの様々な共通認識やその延長線上にある生活、社会、文化に基づいた身体的なリアクションでもあり、新作シリーズ「桂 KATSURA」はそれらを再考し、その前提となっているものを問い直すことから始まっている。