EXHIBITIONS

quartets online

quartets online 画像提供=YCAM

 音楽家の大友良英をはじめ、数多くのアーティストが共作するインスタレーション作品《quartets》の新作が、山口情報芸術センター[YCAM]の特設ウェブサイトで公開されている。

《quartets online》は、2008年にYCAMで発表された《quartets》をオンラインで鑑賞可能にした新作。ベースとなる《quartets》では、音楽家8名の演奏をとらえたシルエットのみの映像を素材とし、演奏は「他のプレイヤーの存在を想像しながらソロで即興演奏を行う」という指示のもと、個別で行われた。この映像が展示室内のキューブ状のスクリーンに固有のアルゴリズムに則って再生され、また、展示室の壁面には木や鉄などが音の振動で震える様子もつねに表示された。

 観客はスクリーンとそれを取り囲む壁面を同時にすべて見ることはできないため、演奏者全員の音を同時に聴くことはできても、全貌を見渡すことはできない。そして、コンピュータによってつねに新しい組み合わせが生成されるため、どの瞬間も一度きりの「即興演奏」であった。

 新作《quartets online》は、《quartets》をオンラインならではの作品に再構成したもの。無限の即興演奏をインターネットを介して鑑賞者各自の端末でいつでも体験できる。このアイデアは《quartets》の発表後からほどなく、大友とYCAMとのあいだで検討されていたもので、長い年月を経て実現に至った。インターネットにこだまする、音楽家たちの儚く繊細なアンサンブルは、経験の基盤としての空間や時間の今日的な意味や、人と人との距離について、改めて考えるきっかけとなるだろう。

《quartets online》の参加者は、大友のほか、平川紀道(アーティスト)、木村友紀(美術作家)、石川高(音楽家/笙奏者)、一楽儀光(音楽家/ドラマー)、ジム・オルーク(音楽家)、カヒミ・カリィ(音楽家)、Sachiko M(サインウェーブ奏者/即興演奏家/作曲家)、アクセル・ドゥナー(トランペット奏者/エレクトロニクス奏者/作曲家)、マーティン・ブランドルマイヤー(音楽家/ドラマー)。