EXHIBITIONS

石橋ユイ/吉澤知美「tsui」

2020.11.13 - 11.29

写真上は、石橋ユイ《精霊 Ⅱ》、下は、吉澤知美《Hidden spilled out feelings》

 アーティストの石橋ユイと吉澤知美による2人展「tsui」がs+artsで開催。表現方法や制作テーマは異なるいっぽう、相反する要素や対となる存在を作品制作の重要な軸に、物事の本質を見出そうするふたりの新作を展示する。

 石橋は1985年神奈川県生まれ。2011年多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。石粉粘土や樹脂粘土に様々な素材を加えて不思議な生き物を立体で制作している。

 石橋がつくり出す生き物は、木が頭部から生え、時には炎や月などが頭部の一部になるなど、自然とのつながりが体から湧き出ているかのようなかたちをし、神話に出てくる神や自然の妖精のように、神聖な雰囲気をもつものが多い。そこには、「ヒトの心の奥底にある、太古の記憶のようなものを知りたくて制作している」と話す石橋の動機が密接に関わっており、また石橋は、すべての生命は宇宙であり神であり、聖と邪、男と女、陰と陽、悲しみと喜び、生と死など、あらゆる相反する要素がひとつになってすべてを内包している世界であると考えている。

 吉澤は1984年東京都生まれ。2008年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業、10年同大学大学院美術研究科絵画専攻修了。日常生活のなかで繰り返されていく、生・死、光・影、喜び・悲しみ、快・不快といった、つねに「対」となる存在があることで、互いの存在を確かめ合い、成り立っていくことに焦点を当て、主に油彩を使って制作を行う。

 作品に描かれる女性たちはいずれも、不安とも穏やかとも取れる表情で、その存在が主張されるかのような何もない背景に静かに現れる。そして女性たちの周りには、装飾を施すように、しばしば摘み取られた花や蝶の羽だけをとって描かれる。そこには、1枚の絵のなかに対となる2つの存在を見つけられるよう、溶け合ったひとつのものになる前の存在が表現されている。