狩野岳朗「moment room」

　自然での観察をもとに作品を描く画家・狩野岳朗の個展がnidi galleryで開催される。

　狩野は群馬県出身。植物や自然を観察しフィールドスケッチを重ね、抽象絵画を制作。個展での作品発表のほか、ワークショップやライブ活動、書籍の装画やアパレルブランドとのコラボレーションなども手がけている。

　木を観察し、枝葉を描くことから抽象画の制作を始め、ライフワークとなっている野外での木々のスケッチで、自身の心象を蓄え思考を巡らせてきた狩野。その心の内側に蓄えた心象を取り出し、それが消えないうちに描き上げ、瞬間をかたちにしてきた。

　本展では、これまでの作品とは異なる表情をもつ最新作を発表。新たな作品群は、狩野が閃いた瞬間に得たものを、より淡々と出し続ける「持続した意志」ともとらえられる取り組みによって描かれ、繊細ながらも揺るぎない世界が表現されている。

　白、グレー、薄いブルーなどの淡く控えめな色彩の機微、絵具の質感やボリューム、陰影のリズム。個々の作品の存在感とともに、作品群全体から有機的なつながりが感じられ、ギャラリー内には詩的で心地良い空気が広がる。