東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展

　清澄で叙情性を湛えた風景画の数々により、戦後日本画の世界に大きな足跡を残した東山魁夷（1908〜1999）。東山が生涯でもっとも長い年月をかけて取り組んだ仕事が、律宗の総本山、奈良・唐招提寺御影堂の障壁画だった。

　1964（昭和39）年、唐招提寺の長老は、鑑真和上千二百年忌を記念して、国宝・鑑真和上像を安置するための御影堂建立を念願した。そしてその障壁画の制作は、国民的な人気を誇っていた東山に託され、画家本人は生涯のすべてをかける気持ちで依頼を引き受けた。

　五室にわたる大障壁画は、日本の風土の象徴としての海と山、鑑真和上の故国・中国の風景からなる。東山は日本や中国の各地を歩いてスケッチを重ね、幾度も構成を練り、10年以上の歳月を費やしてこの記念碑的大作を完成させた。

　本展では、通常、年に数日しか公開されることのない唐招提寺御影堂の障壁画全68面を一堂に展示。さらに、制作に至る過程のスケッチや下図なども紹介し、東山が鑑真和上に捧げた祈りの美の全貌に迫る。