EXHIBITIONS

天才絵師・鰭崎英朋の美人画

―朝日コレクション 明治・大正の木版口絵より

2020.09.05 - 10.25

鰭崎英朋 柳川春葉著『誓』前編 口絵 至誠堂書店 大正4年(1915)6月 朝日コレクション 画像提供=立命館大学アート・リサーチセンター

鰭崎英朋 泉鏡花著『続風流線』口絵 春陽堂 明治38年(1905)8月 朝日コレクション 画像提供=立命館大学アート・リサーチセンター

鰭崎英朋 「横櫛おとみ」(『娯楽世界』大正3年10月号口絵) 鈴木書店 大正3年(1914)10月 朝日コレクション 画像提供=立命館大学アート・リサーチセンター

 鰭崎英朋(ひれざき・えいほう、1880~1968)は美人画で人気を博し、艶美なヒロインを描いて、明治・大正期の文学界を鮮やかに彩った画家。小説や文芸雑誌の巻頭を飾り、物語の主人公や一場面を紹介する「口絵」のジャンルで活躍した。

 当時、一流の画家に制作を依頼していた口絵は本の売れ行きを大きく左右し、明治・大正期の小説や文芸雑誌に欠かせないものであった。東京に生まれ、17歳で浮世絵師・右田年英(みぎた・としひで)に入門した英朋は、日本画を展覧会に発表しつつ、泉鏡花や柳川春葉ら人気小説家の口絵を手がけ、挿絵画家としての名を確立した。

 愁いを帯びた目元、小さな赤い唇、ほつれた髪。物語のヒロインの感情を繊細に描き出した英朋の口絵は読者を魅了し、人々の絶大な支持を得た。

 本展は英朋の生誕140年を機に、明治・大正期の口絵約3500点を誇る朝日コレクションより、木版多色摺の口絵を中心に約150点を厳選し、貴重な挿絵原画や下図、関連作品とともに英朋の画業をたどる。

 また、人気の双壁をなした鏑木清方(かぶらき・きよかた)をはじめとする、同時代の画家の木版口絵約50点をあわせて紹介。物語の登場人物の心の機微をとらえた画家たちの卓越した感性と、画家の描線と色彩を木版多色摺で再現した彫師・摺師の超絶技巧の競演も見どころとなる。