EXHIBITIONS

「KISSAKI」刀匠 高見太郎國一×画家 大槻透・木下拓也・後藤温子

高見太郎國一 脇差:春時雨 2020

後藤温子 鬼の夢 2020

 日本刀と現代美術家によるコラボレーション展「『KISSAKI』刀匠 高見太郎國一×画家 大槻透・木下拓也・後藤温子」が、MITSUKOSHI CONTEMPORARY GALLERYで開催中だ。

 日本刀は玉鋼という素材から、職人が何度も鍛錬する工程を経て、反りや切先を形成し、地鉄の美しさや刃文を表現する。光の当たり方の差異だけでも、その刃文の美しさは変化し、そのような物質性も日本刀の魅力であると言えるだろう。

 近年、日本刀への関心の高まりから、刀鍛冶の文化や高度な技巧を紹介する機会が増え、また刀の持つ強い個性をキャラクター化したゲームが人気を博するなど、日本刀の可能性は広がり続けている。

 本展には、2018年に現代刀職展高松宮記念賞(最高賞)を受賞した無鑑査刀匠・高見太郎國一がつくり上げた三振の刀にインスピレーションを受けた3人の現代美術家、大槻透、木下拓也、後藤温子が参加。ともに東京藝術大学大学院の油画技法材料研究室を修了した3人による、刀とのコラボレーション作品を展示する。

 大槻は1973年福島県生まれ。キリスト教宗教画に見られる黄金背景に着想を得た、装飾性の強い絵画を制作。本展においても刀剣のメタリックな要素を金色のレリーフで表現するなど、自身の持ち味を発揮した作品を発表する。

 木下は85年佐賀県生まれ。サブカルチャーや古典絵画、シュルレアリスムに影響を受けた作風で知られている。近年は鬼をテーマにした作品を制作。本展では、刀の固有の刃文を水墨表現によって豊かに表現する。

 後藤は82年東京都生まれ。夢をテーマにしながら、高度な描写力によって緻密で幻想的な世界を表現。刀剣の秘める魔性を絵画の画面上に露わにしたような、蠱惑的ともいえる作品を発表する。

 本展は伝統的な素材・技法に基づきながら物質としての魅力を探求し、現代の感覚によって表現された作品からなる 「いま」と「昔」をつなぐ展覧会。日本刀自身の美しさと、これに魅せられた3人の作家による力作を目にしたい。