荒井美波「行為の軌跡 Ⅳ」

　太宰治、夏目漱石、谷崎潤一郎といった文豪たちの原稿に綴られた直筆文字を、針金で再現するアーティスト・荒井美波の個展。

　荒井は1990年東京都生まれ。直筆文字に見られる時間軸（書き順）を可視化するため、針金を用いて立体的に臨書する「行為の軌跡」シリーズを発表。多くの人に馴染みのある日本近代文学に着目し、身体の延長としての文字について考察し続けている。主な受賞歴に、 「木からできたブックカバー」グッドデザイン賞（2011）、「MITSUBISHI CHEMICAL JUNIOR DESIGNER AWARD2013」佳作受賞などがある。

　活字になる前の文豪の直筆原稿に残される筆癖や書き順、ルビや編集の跡などからは、書き手の人間性や身体性を感じることができる。本展は、そのように人が物に働きかけた行為の軌跡を明らかにすることで、物の奥から人を感じることに挑む「行為の軌跡」シリーズ4回目の個展。

　活字によって印刷された書籍からは垣間見ることができない作家たちの思考の痕跡や執筆の軌跡を、原稿用紙に書き残された文字たちと時間をかけて向き合うことで追体験することを試みる。