EXHIBITIONS

高松次郎/デイヴィッド・シュリグリー「レンガと脚立とネオン」

高松次郎 複合体(脚立とレンガ) 1971 ©︎ The Estate of Jiro Takamatsu Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 ユミコチバアソシエイツではギャラリーオープン当初より毎年、美術家・高松次郎が行った制作活動を紹介し続けてきた。

 今年は、ふたりの現代美術作家、高松次郎とデイヴィッド・シュリグリーの作品で構成する企画を開催する。

 イギリスを拠点に活動するシュリグリーは、ドローイングや彫刻など、多様な表現媒体を通じて、ユーモラスかつ脱力感のある作品を手がけてきた作家だ。

 本展の出展作である「EXIBITION」は、赤いネオン管でタイトル通りの文字が造形された作品。展示会場の壁面に掲げられ、そこには、いわゆる「制度批評」と呼ばれる、美術作品が置かれる場や制度自体に対する批評性がある。しかし、ひょろひょろとした手書き文字を思わせるその造形からは、同時に、シリアスな現代美術のあり方からはあくまで距離を取ろうとするシュリグリーの戦略を垣間見ることができる。

 60〜70年代のコンセプチュアル・アートの黎明期、日本におけるコンセプチュアルな傾向を牽引した高松は、71年にレンガの上に1本の脚立の脚を載せ、脚立全体を傾けた《複合体》を手がけた。同作品は、「もの」の単一性や複数性、そして事物相互の「関係」などの概念をきびしく問い直すものとして、コンテンポラリーアート史上の歴史的問題作であり続けている。

 シュリグリーが展示する、展示会場内に掲げられる「EXIBITION」の文字は、半ば自明の事柄であるがゆえにユーモラスだ。しかし、このような無意味性ゆえに、「EXIBITION」のネオンは、その文字が持つ意味を脱臼させ、文字や言語というものの存在のあり様に問いを投げかけている。

 そして同じように、高松の《複合体》もまた、脚立の機能を部分的に失効させることにより、「もの」それ自体の存在のあり様について再考させる作品であると言えるだろう。時代も国も異なるふたりのアーティストが手がける、ミニマルで知的な作品の邂逅を通して、物事を認識することの多様さと広がりを感じ取りたい。