EXHIBITIONS

西村有未「図形的登場人物(雪娘)と望春の花」

2020.07.24 - 08.09

西村有未 雪娘(『ロシアの昔話《愛蔵版》』、内田莉莎子訳、福音館書店、1989年、P.132-133)部分 2019

西村有未 望春の花2 2020

「図形的登場人物」というイメージから出発し、絵画を描く西村有未の個展がFINCH ARTSで開催される。

 西村は1989年東京都生まれ、2019年京都市立芸術大学大学院美術研究科美術専攻研究領域(油画)を修了。近年の主な展覧会に、「PIE314 FOR MAKE WORKS」(ON MAY FOURTH、東京、2019)、 「第3回CAF賞入選作品展」(3331 Arts Chiyoda、東京、2016)、「TWS-Emerging2013:例えば祖父まで、もしくは私まで。こんもり出現」(TWS本郷、東京、2013)などがある。16年に第3回CAF賞保坂健二朗賞を受賞。

 西村が言う「図形的登場人物」とは、民間伝承文学の研究者マックス・リュティの言葉を引用したもので、「物語の展開を優先するため、個人的描写や感情表現を省略された人」を指す。明快な情報の欠如が、新たな創造へと駆り立てさせる引力を持つ民間伝承の物語の力を借り、絵具に代替することで、絵で物語る行為とマチエールの可能性を探っている。

 例年とは異なる春を迎え、西村は苦手だったはずの以前の様相が恋しく、その思いを昇華しようと、花のモチーフを中心にドローイングを制作した。そしてその後、描けないままだった「図形的登場人物」の絵に再び手をつけた。

 本展では、花をモチーフとした「望春の花」の作品群と、ロシア民話の「雪娘」の肖像を描いた新作を展示。春のドローイングを経て、「図形的登場人物」へのとらえ方に生じた変化を垣間見せるとともに、ロシア民話の「雪娘」に対する自身の解釈をひとつに空間で表現する。