蓮井幹生「Hidden Landscapes」

　雑誌や広告などで活躍してきた写真家・蓮井幹生の個展が東京・目黒のwhy not ? で開催される。

　蓮井は1955年東京都生まれ。明治学院大学社会学部社会学科を卒業後、アートディレクター・守谷猛に師事しデザインを学ぶ。84年から独学で写真を始め、88年の個展を機に写真家へ転向。新潮社の雑誌『03』をはじめ、カルチャー系エディトリアルシーンで著名人のポートレイト作品を発表し注目を集める。

　90年代よりパノラマカメラで風景を撮影してきた「PEACE LAND」は、作家の世界観の中核をなす作品群で、2009年にフランス国立図書館へ収蔵。寺院や祈りの様子の記録から始まった同シリーズは、2000年代には洗練された地平線の構図と色彩が際立つような変化を見せている。

　本展では、2014年の熊本滞在を機に制作が始まった「Hidden Landscapes」シリーズを展示。30年以上にわたる「PEACE LAND」シリーズの創作の変化からも影響を受ける「Hidden Landscapes」には、作家の視線と地平線との内省的な対話がより概念的に示されるようになり、自己よりも大きな存在である自然と対峙していく自律した瞬間の集積が作品として結実している。

　自然の荘厳さと人間の儚さ、光と空間に囲まれ続ける人生の時間。この世界に対する慈しみの心と尽きることのない好奇心をもって撮影された蓮井の写真は、「眼差し」の持つ潜在的な力をもう一度私たちに思い出させてくれるだろう。