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久保寛子「Wisdom of the Earth」-大地の知恵―

久保寛子 ドローイング「Wisdom of the Earth」-大地の知恵-

 久保寛子は、テキサスクリスチャン大学美術を修了後、現在広島県を拠点に活動する気鋭のヴィジュアルアーティスト。農耕や偶像をテーマに、先史芸術や民族芸術、文化人類学の学説に取材しながら、生活に身近な素材を用いて制作される久保の作品は、これまで瀬戸内国際芸術祭2016をはじめ、その土地の環境に呼応しながら、人間の創造的な営みや想像力のダイナミズムを見る者に示してきた。

 本展では、彫刻を学んだ作家の彫刻に対する批評的な視点から、世界各地に古代から伝わる「女神の殺害」についての説話を読み解いた意欲的な最新作を発表。加えて、独立した3つの作品シリーズが並ぶ。

 久保は、「女神の死」というネガティブな事象が人間の命の源となる食物の起源となったと説く神話に、「彫刻の破壊」というテーマを重ねることで、私たちの現在と未来における創造を問うことを試みる。作家の手でつくられる、目の前に開かれた万物の流転を象徴する光景は、死と生、破壊と建設、歴史と非歴史が混交となった「創造の大地」として、見る者の周囲に立ち現れるだろう。