EXHIBITIONS

木村華子「SIGNS FOR[    ]」

 現代アーティスト・木村華子の個展が、銀座のタグボート(阪急MEN’s TOKYO 7階)ギャラリースペースにて開催されている。

 木村は京都府出身、大阪市在住。 同志社大学文学部美学芸術学科にて美術史や芸術学を学びながら、商業フォトグラファーを目指し専門学校で写真を学んだ。卒業後は広告や雑誌などで撮影を行う傍ら、2011年頃より自身のライフワークとしての写真、立体、インスタレー ションなどの作品制作を開始。「存在する/存在していない」などの両極端な事象の間のグレーゾーンに写真を通して触れることをテーマに、シンプルかつコンセプチュアルな作品を展開してきた。

 本展では、展示型コンペ「UNKNOWN ASIA 2018」にてグランプリを受賞した、写真とネオンの作品シリーズ「SIGNS FOR[    ]」を展示する。

「SIGNS FOR[    ]」は、明確なルールを設定して制作したシリーズ。ルールは「デジタル上で合成や消去などの加工をしない」「雲を写さない」「看板の背景が青空になるシチュエーションでしか撮らない」というストイックなもので、自ら真っ白な看板を探すことはせずに、街を歩くなかでの偶然の出会いでしか被写体を撮らない言う。そうすると作品制作は予想より時間がかかってしまうが、木村はあえてそこにこだわりを持っている。

 撮影した写真は、ネオン工房で職人に特注で作品にあわせたネオンをつくってもらい、それと写真を組み合わせることでルール化された無機質な表現に彩りを加えることに成功。それは予定調和のように見えて、偶然がつくり出す美しさにこだわる木村が考え抜いた表現方法だ。
 
 同シリーズのメインテーマは「『意味があること/ないこと』のあいだのグレーゾーンについて」であると語る木村。相反する要素が同時に成立する瞬間を追い求めながら、一見無用に見える存在の美しさを表現している。

 タグボートでの初個展となる本展では、「SIGNS FOR[    ]」シリーズに加え、小作品を展示・販売も行う。