EXHIBITIONS

修復作品公開

長谷川路可 よみがえる若き日の姿

モザイクを制作する路可 写真提供=鵠沼郷土資料展示室

長谷川路可 自画像 1921年頃 藤沢市蔵

長谷川路可 家族 1923年(左:修復後、右:修復前)

模写をする路可

 旧国立競技場のメインスタンド上部にある、一対の大きなモザイク壁画《勝利(野見宿禰像)》と《栄光(ギリシャの女神像)》。1964(昭和39)年、東京オリンピックの主会場を飾ったこの壁画には、それぞれ、相撲の神様とギリシャの女神が象られており、東洋と西洋の古代の神が並び立つ姿は、アジア初のオリンピック開催を祝福するにふさわしいものであった。本作は現在、旧国立競技場の解体にあたって保存され、新しい国立競技場に移されている。

 作者は、画家の長谷川路可(1897〜1967)とその教え子たち。長谷川は若き日に日本画、西域壁画、油彩画、フレスコ画にふれ、生涯において様々なジャンルの作品を描いた。

 東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科に学んだ長谷川は、1921年の卒業後すぐに渡仏。油彩画をサロンに出品するかたわら、欧州の博物館に保管されていた西域発掘の古い仏教壁画の模写に従事し、その経験から壁画への関心を深め、フレスコ画の技法も身につけて27年に帰国した。

 以後10年間は藤沢市の鵠沼にアトリエを構え、日本画を追求するほか、教会や劇場などの壁画を制作。日本に本格的にフレスコやモザイクを伝えたパイオニアとして評価されている。

 本展は、多彩な路可の制作活動のなかでも滞欧時代(1921〜27)に焦点を当て、市所蔵作品を中心にその足跡をたどるもの。制作から100年近くが経過し、画面に傷みが生じた《自画像》を含む作品6点を修復し、その工程とともに披露する。