田中知美「溶けあうかたち」

　ひだ状のパーツからなる繊細な作品を手がける陶芸家・田中知美の個展が開催される。

　田中は1983年兵庫県生まれ。2008年愛知教育大学大学院教育学研究科芸術教育専攻修了。陶芸家の中島晴美に師事し、大学院在籍中に若手陶芸家の登⻯門「朝日陶芸展」で奨励賞を受賞した。

　田中の作品は、手びねりで形成した母体に、薄く伸ばした大小様々なひだ状のパーツを1枚1枚貼り付けるという工程を経て生み出される有機的なフォルムが特徴。⻑時間土と向き合うこの制作方法に思い至ったきっかけは、板の上で押しつぶした土の表情が美しいと感じたことだったと言う。

　また、時間をじっくりかけて土と接し作品をつくることで、自身を整理して表現することができると語る田中。この独自の技法を追求していくなかで、膨らみねじれ震える、そんな言葉にならない心の動きを、また力強くて儚い生命そのもののかたちを表現したいとしている。

　現代美術 艸居での初の個展となる本展では、新作の陶作品11点を発表。「複数のかたちが組み合わされることでよりおもしろいかたちが生まれるのでは」という作家の思考に基づく試みを見ることができる。