EXHIBITIONS

元永定正「あみだだだだ」

元永定正 きいろのなかで 1981 © Motonaga Research Archive Institute Ltd.

元永定正 ぐれいのおおきなしかく 1981 © Motonaga Research Archive Institute Ltd.

 ファーガス・マカフリー東京では、『もこ もこもこ』や『もけらもけら』などの絵本でも知られる画家・絵本作家の元永定正(1922〜2011)が、1980〜85年のあいだに制作した絵画作品に焦点を当てた個展を開催する。

 元永は三重県生まれ。独学で作品制作を始め、40年代後半頃には地元の定期刊行物や新聞のマンガの仕事に携わった。その後、濱邊萬吉に師事して画家に転向し、55年に吉原治良に招かれて「具体美術協会」に参加。田中敦子や白髪一雄、村上三郎らメンバーとともに活動し、実験的かつ自由で遊び心のある精神を築いた。

 57年頃より作品はより抽象化していき、大型のキャンバスに顔料を多量に積層するスタイルを確立。60年代には抽象表現をさらに発展させ、砂利や小石など従来の絵画にはない素材を取り入れた。
 
 元永の制作の幅が絵画からイラストレーションへ広がるのは、次男が誕生した60年代後半のニューヨーク滞在のとき。元永は絵画への重層的なアプローチを放棄して、制作初期のフラットでモデル化されたスタイルの作風に移行。73年に最初の子供向け絵本を発表した。

 本展では、「あみだくじ」に喚起された《あみだだだだ》(1980)など、子供たちのアートと遊びを直接的に連想させる作品を含む絵画7点を展示。元永が具体に属していたそれまでの表現方法の反映と革新から生まれた、画期的な取り組みを紹介する。