EXHIBITIONS

メゾン・ケンポクの『何かはある』

メゾン・ケンポク、茨城県北各地
2020.01.17 - 03.08

松本美枝子 個展「ここがどこだか知っている」(2017)インスタレーションビュー

松本美枝子「KENPOKU ART 茨城県北芸術祭2016」インスタレーションビュー

松本美枝子「海を拾う」(2020)より

松本美枝子「海を拾う」(2020)より

米子匡司「OPEN GATE」(2015)より

コレクティブ「メゾン・ケンポクの読書会」

大森潤也(日立市郷土博物館学芸員)

 茨城県北地域おこし協力隊が開催する「メゾン・ケンポクの『何かはある』」は、写真家・松本美枝子が茨城県北エリアでの滞在2年目になる2019年に行ったリサーチの経過報告のプロジェクトだ。本プロジェクトは、松本も招聘アーティストとして参加した2016年の「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」の閉幕後、地域でのリサーチや作品制作を続ける中で生まれた、「新しいアートプロジェクトのあり方」を探るというテーマも併せ持っている。

 松本は1974年茨城県生まれ。人々の日常や自然環境の移動などをテーマに、写真や映像、テキストなどによる作品を発表している。主な個展に、「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、2006)、「The Second Stage at GG #46『ここがどこだか知っている。』」(ガーディアン・ガーデン、東京、2017)など多数。また各地でワークショップを開催するなど教育普及活動も行うほか、茨城県北地域おこし協力隊としてメゾン・ケンポクを運営し、リサーチをベースにした地域とアートの新たな場所づくりを模索している。

 メゾン・ケンポクは、茨城の地域活性化の一環として2018年にオープンしたスペース。レジデンスやアートプロジェクトなど制作活動のための場所として活用されており、茨城県北地域おこし協力隊の松本と日坂奈央(ファッション・デザイン)のふたりが常駐している。

 今回のプロジェクトには松本と日坂とともに、林曉甫(NPO法人inVisible 理事長、マネージング・ディレクター)、岡野恵未子(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)、米子匡司(音楽家)、大森潤也(日立市郷土博物館・美術担当学芸員)、華雪(かせつ、書家)、澤隆志(キュレーター)、山野井咲里(フォトグラファー)、「メゾン・ケンポクの読書会」(コレクティブ)の10組が参加。1月17日のアートミーティグをスタートに8つのプログラムを展開する。松本が人や自然の「移動」をテーマに、写真とテキスト、音などを組み合わせた新作を発表する個展「海を拾う」をはじめ、写真展や音楽ライブ、読書会、加えて来場者も参加できる地域リサーチなど多様な切り口で、様々な人とともに茨城県北地域で表現することを問い、実践する(各プログラムの詳細は公式Facebookなどで発信)。
 
 地域の歴史をリサーチし、その活性化にアートがどのように関わっていけるかを真摯に考え続けてきた松本。「メゾン・ケンポクの『何かはある』」では、地域の人々と訪れる人々をつなぐ可能性を持つ複数のプロジェクトを同時並行していくことで、「メゾン・ケンポク」というひとつの情景をつくるという。