EXHIBITIONS

壁に世界をみる―𠮷田穂高展

2019.12.07 - 2020.02.16

𠮷田穂高 赤の壁 1992 三鷹市美術ギャラリー蔵

𠮷田穂高 秋 1948

𠮷田穂高 室生の塔 1954 東京国立近代美術館蔵

𠮷田穂高 石と人、B 1956 三鷹市美術ギャラリー蔵

𠮷田穂高 湖畔の神話、A 1970 町田市立国際版画美術館蔵

𠮷田穂高 町外れの神話、昼 1977 町田市立国際版画美術館蔵

𠮷田穂高 私のコレクションより-扉 1975 東京国立近代美術館蔵

𠮷田穂高 サンミゲル旧一番通り 1987

𠮷田穂高 緑の壁 1992 三鷹市美術ギャラリー蔵

 45ヶ国以上を訪れ、旅を愛した戦後日本の版画界をリードした前衛版画家・𠮷田穂高の没後25年を記念した大回顧展が開催される。
 
 𠮷田は1926年生まれ。父は太平洋画会の創立に関わった洋画家で、後年は版画家となった𠮷田博、母は女流画家の𠮷田ふじを、15歳年上の兄・遠志も画家への道を歩む美術一家のなかで育った。中学時代に開戦となり、徴兵猶予のため44年に旧制第一高等学校理系に進学。そこで現代短歌へ傾倒し、独学で油彩を始めた。

 戦後は短歌活動のほか、日本アンデパンダン展などに油彩画を出品。画家としての一歩を踏み出すが、50年代前半には活動の軸足を版画に移した。55年、兄とともにアメリカ・中米を旅行。古代マヤ文明に強い衝撃を受け、以降、生命感をテーマにした力強い抽象木版画へと作風を変化させた。

 63年に再び渡米した際には、当時全盛であったポップ・アートに触発され、木版に写真製版を併用した独自の技法を開拓。72年にはオーストラリアで撮影したスナップ写真を素材にした作品を制作し、「私のコレクション」シリーズを開始した。それまで撮り溜めた各地の写真を素材にした同シリーズには、アトリエがある三鷹市井の頭で取材した題材も描かれている。

「旅好き」で知られ、45ヶ国以上を旅するなかで名所景色よりも、壁や塀、柱、標識、家といった身近で無名の対象物にまなざしを向けた𠮷田。本展では、これまで紹介されていなかった油彩画や初期の版画作品にも注目し、その原点から晩年にいたる作品を紹介する。