EXHIBITIONS

キー・ドナキー「There might be someone else inside you, said the Mirror, beside you.」

キー・ドナキー The Adored 2019 © Kaye Donachie Courtesy of Yuka Tsuruno Gallery, Tokyo / Maureen Paley, London

キー・ドナキー Monotonous Remorse 2019 © Kaye Donachie Courtesy of Yuka Tsuruno Gallery, Tokyo / Maureen Paley, London

キー・ドナキー Fathomless depths of my boredom 2019 © Kaye Donachie Courtesy of Yuka Tsuruno Gallery, Tokyo / Maureen Paley, London

キー・ドナキー Dream sower in the field of sleep 2019 © Kaye Donachie Courtesy of Yuka Tsuruno Gallery, Tokyo / Maureen Paley, London

展示風景

 ロンドンを拠点に活動するアーティスト、キー・ドナキーの日本初個展が開催されている。

 ドナキーは1970年グラスゴー生まれ、97年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート修士課程修了。グレーやブルー、グリーン調の淡くて控えめな色彩と、霞みがかったソフトフォーカスが特徴の絵画作品を制作。歴史的なカウンターカルチャーへの一貫した興味から、作品の多くに、歴史上に実在した、あるいは文学のなかに登場する女性など史実と想像が混じり合った人物像を描く。作家にとってこれらの人物像は、現実空間と物語や想像力のなかで繰り広げられる架空のイメージとが溶け込んだ瞬間を生きる者であり、その者たちを再想像し作品を通して現在へと呼び起こしている。

 本展では、20世紀の芸術や文化に影響を及ぼしたラディカルな女性たちのイメージをもとに、現実と架空の時空間が折り重なるような新作絵画を発表する。詩人のアイリス・ツリー、詩人でパフォーマーのエミー・ヘニングス、写真家のリー・ミラー。幽霊のように詩的で抽象的な空間に浮かび上がる女性像は歴史上の人物を思い起こさせると同時に、気を散らしながら瞑想や夢想にふける所作が、タイトルに冠したアメリカの詩人ジェームス・ブロートンの詩のように「何かほかの」局面をほのめかすような矛盾を内包する。