EXHIBITIONS

あざみ野コンテンポラリー vol.10

しかくのなかのリアリティ

加茂昂 風景と肖像のあいだ1 2017 個人蔵 Photo by Kato Ken

水野里奈 川に机 2014

横野明日香 静物 2018

松本奈央子 die Spinnerei / 紡績工場 2018

山岡敏明 GUTIC MORPHOLOGY UPLT06 2019

「あざみ野コンテンポラリー」は、美術という枠や社会的評価にとらわれず、様々なジャンルのアーティストが行う表現活動に目を向けたシリーズ展。第10回となる今回は、「絵画表現のアクチュアリティ」をテーマに、絵画を表現手段としているアーティスト5名を紹介する。

 参加作家は、東日本大震災後、「絵画」と「生きのびる」ことを同義にとらえ、心象と事象を織り交ぜながら「私」と「社会」が相対的に立ち現われるような絵画作品を制作する加茂昂、中東の細密画や伊藤若冲の水墨画から着想を得た重層的な作品を描く水野里奈、ダムや灯台、ポットや植物などをモチーフに、疾走感あるストロークで静謐な世界観を生み出す横野明日香。

 昨年ドイツから帰国し、絵具が平面上で生成している、反応しあっていることの「顕れ」を重視しながら制作を続けている松本奈央子、ある種の示唆的な構造をはらだんフォルムの総体を「GUTIC(グチック)」と仮称し、現実と地続きの世界に「あったかもしれない可能性」としてのかたちを偏執的に探る山岡敏明の5名。それぞれが、日々更新される現実から絵画が乖離することがないよう苦心し、絵画の内外の緊張関係とも言える距離感を保ちつつ表現活動を続けている。

 絵画の外の世界にある「現実」をスタート地点として、制作に向き合うアーティストたちの個々の行為としての現在の絵画をとらえる本展。キャンバスの四角いフィールドに表現された個々のリアリティがどのように積層し、絵画の外の世界や鑑賞者と接続しようとしているのか、媒体としてのアクチュアリティを問いながら読み解く。