EXHIBITIONS

山本良比古

-緻密な風景を描いた“虹の絵師”

山本良比古 ミラノ・ドゥオモ聖堂 1982

山本良比古 白川郷 2019

山本良比古 犬山の鵜飼い 1986

 山本良比古(やまもと・よしひこ)は1960年代から人気を博した、色鮮やかな油彩を制作する画家。48年に名古屋市で生まれた山本は、聴覚・言語・知的な障がいがあることから特殊学級のある中学校へ進学し、当時の担任であった指導者・川崎昂と出会った。そして川崎の大きな手助けを受けながら、日本やヨーロッパなどの様々な場所を訪れて絵を描き、二人三脚で活動してきた。

 山本の絵画の特徴は、緻密な描写と点描による色鮮やかな風景。当時のメディアは障がいがありながらも卓越した絵画を制作する山本を「虹の絵師」や「第二の山下清」と呼んで紹介した。しかし、同じく障がいがありながら大衆に愛された画家・山下清のように、山本は美術業界のなかで画家としてまだ正当に評価されていない。

 本展は山本の中学生時代の初期の作品から、代表的な油彩のほか、素描や版画や陶器の絵付け、また近年再び筆を執り制作した新作などを一堂に展示。指導にあたった川崎が残した資料や当時取り上げられたメディアの資料などを参照しながら、風景を見る素朴な喜びを感じさせる山本の画業を振り返る。