ジェイ・ムーン「Thin Red Line」

　ジェイ・ムーンは韓国・ソウル出身、ニューヨーク在住のアーティスト。1996年よりレゴを使った作品の制作を開始し、2010年よりニューヨーク、マイアミ、ネブラスカなどアメリカ各地で、ツリーハウスや都市景観を描いたようなパブリックアートを展開している。

　多くの人と考えを共有するべく、イギリスや韓国でもレゴを組み合わせた建築や自然を象った参加型のプロジェクトを実施。15年に開催された六本木アートナイトで、日本初のレゴによる参加型プロジェクトを行った。

　ムーンは18年、ニューヨークのマリッサ・ニューマン・プロジェクツで、5万6576ピースの色違いのブリックからなるフロアインスタレーション《Thin Red Line》を発表。同作品は、戦場を舞台としたジェイムス・ジョーンズの小説『Thin Red Line』の映画版からインスピレーションを受け、沈黙の中で死と向き合う象徴的なシーンと自身の闘病生活とを重ね合わせながら、映画の台詞を暗号化し、見えない、聞くことができないかたちに翻訳した。

　本展は、ギャラリー内に瞑想部屋のような個室をつくり、ニューヨークでの個展を再現した展示。踏めば壊れそうな床を歩いて、鑑賞者はようやく中央に置かれた細い赤線にたどり着くことができ、戦争や死、ムーンが体験した静寂と向き合うことができる。