EXHIBITIONS

建築家・大髙正人と鎌倉別館

竣工時の鎌倉別館 1984 撮影=大谷一郎

竣工時の鎌倉別館 1984 撮影=大谷一郎

前川國男の事務所を訪れたル・コルビュジエと前川、所員たち 右端に大髙正人 1955.11.4 東京 画像提供=前川建築設計事務所

アンリ・マティス イカロス 1947 神奈川県立近代美術館蔵 山口蓬春文庫

佐野繁二郎 画家の肖像(死んだ画家) 1959/64(加筆) 神奈川県立近代美術館蔵

 1984年、建築家・大髙正人(おおたか まさと/1923-2010)設計による鎌倉別館が北鎌倉寄りの鎌倉街道沿いに開館。鶴岡八幡宮の境内に建つ鎌倉館(坂倉準三設計、1951年開館/2016年閉館)の軽快な印象と対照的に、重厚なボリューム感を特徴とした別館では、主にコレクションによる企画展を開催し、当館が普及に力を入れてきた現代彫刻を前庭で紹介してきた。

 大髙は、ル・コルビュジエに学んだ日本近代建築の巨匠、前川國男の下で神奈川県立図書館・音楽堂(1954年)や東京文化会館(1961年)を担当し、独立後は横浜のみなとみらい地区などの総合的な都市計画を手がける一方で、風土に根ざした地方都市の町づくりを推進。1960年の世界デザイン会議に向けて槇文彦、黒川紀章らと結成したメタボリズム・グループでの建築思想活動も知られている。

 芸術への造詣も深く、彫刻家の向井良吉や柳原義達、美術批評家の土方定一(1951年より当館副館長、1965-80年館長)とともに宇部(山口県宇部市)や須磨(兵庫県神戸市)の野外彫刻展に1960年代の発足当時から運営・選考委員として関わり、会場構成を長年手がけている。鎌倉別館の建築と彫刻庭園は、日本の戦後美術と当館の活動、そして大髙の仕事が結実した成果でもあった。

 改修に伴う長期休館を前にオリジナルの建築意匠で見ることのできる最後の企画展として、大髙の美術関連の仕事に焦点を当てながら、鎌倉別館で開催してきた展覧会にまつわるコレクションや関連資料を中心に、鎌倉別館の33年間の活動を振り返る。