EXHIBITIONS

ある編集者のユートピア 小野二郎

ウィリアム・モリス、晶文社、高山建築学校

2019.04.27 - 06.23

『小野二郎著作集』 装幀=平野甲賀 晶文社 1986 世田谷美術館蔵 撮影=上野則宏

『ジェフリー・チョーサー作品集』扉頁 ケルムスコット・プレス 1896 凸版印刷株式会社 印刷博物館蔵

小野の命名による植草甚一のバラエティ・ブック『ワンダー植草・甚一ランド』  晶文社 1971 世田谷美術館蔵

 編集者、ウィリアム・モリス研究家として知られる小野二郎。東京大学を卒業後、弘文堂に入社した小野は大岡信や澁澤龍彦などの『現代芸術論叢書』の編集を担当し、1960年には仲間とともに晶文社を立ち上げた。晶文社時代には、ヴァルター・ベンヤミンやポール・ニザンなどの著作をいち早く紹介するほか、ジャズやロック、映画関連の書籍なども出版。その後、平野甲賀の装幀による本が出版社の顔となる。

 いっぽうで、明治大学教授として英文学を講じる教育者でもあった小野。晩年には飛騨高山の高山建築学校で、19世紀後半のイギリスで活躍したウィリアム・モリスの思想を説き、同校に集った石山修武ら建築家に大きな影響を与えた。

 本展は、日本を舞台にモリスの芸術運動をめぐる様々な考察を展開させたひとりの編集者と、その周辺の活動を紹介するもの。「ウィリアム・モリス」「晶文社」「高山建築学校」の3部で構成し、小野が生涯を通して追い求めた「ユートピア」の思想を探る。
 
 なかでも見どころのひとつとなるのは、52歳で早世した小野の夢を託したユニークな学校「高山建築学校」の活動を示す諸資料。さらに、その思想的源流となったウィリアム・モリスのケルムスコット・プレスをはじめ、平野甲賀の装帳、石山修武の自邸《世田谷村》の模型やスケッチ、川俣正の《ピープルズ・ガーデン》のためのプランなどを展示する。