EXHIBITIONS

project N 75

衣真一郎

衣真一郎 人々とそれぞれの見る風景 2017 Photo by Shinya Kigure

 展覧会シリーズ「project N」の75回では、風景や人物といった身近にあるものをモチーフに、絵画と立体作品を手がける衣真一郎を紹介する。

 衣は1987年群馬県生まれ、2016年に東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了。近年の主な展覧会に、「アーツ前橋開館5周年記念 つまずく石の縁 地域に生まれるアートの現場」(群馬、2018)、「para nature」(EUKARYOTE、東京、2018)、「衣真一郎 山と畑」(ya-gins、群馬、2018)、「BankART Bank U35 2017」(BankART Studio NYK、神奈川、2017)などがある。

 作品タイトルには、「風景」という言葉を多用する衣。その絵画には、山や畑、家並みや道など、記憶の片隅にあるような風景的要素が散りばめられている。それぞれのモチーフは、細部を省いた単色のかたまり、もしくは輪郭で表され、あるものは水平、いっぽうは垂直に描き込んで画面全体の視点が混在している。また、画面に繰り返し現れる「古墳」は、輪郭だけで誰もがそれと認識できるほど記号的であるが、衣の絵画においては、人の上半身のようにも見ることができる。

 衣による「風景」は、散在するモチーフをつなぎ止める重力が不在で、画面の多くを占める白の部分が各要素の自由を担保するように、どこか落ち着かない魅惑的な画面づくりの一端を担っている。