EXHIBITIONS

松川朋奈「Love Yourself」

松川朋奈 それが私にできる全てだった That was everything I could do 2019 © the Artist Ccourtesy of Yuka Tsuruno Gallery

 これまで傷ついたハイヒールや身体の傷、メイクの崩れなどの痕跡や仕草を主題に描き、人間の内面に関心を寄せてきた画家・松川朋奈の個展が開催される。

 松川は1987年愛知県生まれ、2011年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。近年の展覧会に「六本木 クロッシング 2016 展:僕の身体、あなたの声」(森美術館、東京)、「シェルアーティストセレクション」(国立新美術館、東京、2013)など。Asian Art Award ファイナリスト(2017)、福沢一郎記念賞(2011)、ホルベインスカラシップ(2010)を受賞し、作品は大原美術館、森美術館、高橋コレクション、ピゴッチコレクションなどに収蔵されている。

 写実的でどこか劇的な印象を与える松川の絵画は、同世代の女性たちへのインタビューを通して生まれたもの。対話のなかで印象に残ったフレーズを作品のモチーフとして、タイトルにつけている。近年は作品を通して、シングルマザーとして子供を育てる自身の環境や経験の中に生じる困難や葛藤とも向き合うようになったという。

 本展では、母でもある自身の経験を踏まえて、女性たちとの対話を重ねながら、母と子を描いた「Love Yourself」シリーズを発表。ひとり親家庭に対する支援の不十分さや、子供をひとりで守り育てていくプレッシャーと直面するなかで、これらの状況をひとりの問題として終わらせるのではなく、より多角的にとらえるためにひとり親たちへの取材を行った。

 「Love Yourself」という言葉には、「苦しい状況下にいる自分自身を愛することから始めよう」という松川のメッセージが込められている。