EXHIBITIONS

パリに生きた銅版画家 長谷川潔展

―はるかなる精神の高みへ―

長谷川潔 時 静物画 1969 町田市立国際版画美術館蔵

長谷川潔 コップに挿した枯れた野花 1950 町田市立国際版画美術館蔵

長谷川潔 狐と葡萄(ラ・フォンテーヌ寓話) 1963 町田市立国際版画美術館蔵

 1918年にフランスへ渡って以来、パリを拠点に活動した銅版画家・長谷川潔。メゾチントやエングレービングといった古典的版画技法を研究し、独自の技法として確立して、サロン・ドートンヌやフランス画家・版画家協会に所属してパリの画壇で高く評価された。また、フランス文化勲章を授与されるなど、芸術家としての功績が称えられた。

 34年には、パリ日本大使館勤務だった外交官の本野盛一仏訳による『竹取物語』を制作。日本の伝統と西洋文化が融合した近代挿絵本の傑作を完成させた。また、長谷川は春陽会展や日本版画協会展など日本の展覧会にも銅版画を出品。日本人作家に影響を与え、現在、日本の版画史上でも重要な作家として位置づけられている。

 本展では、町田市立国際版画美術館の所蔵品より、長谷川の創作活動の背景や特徴を浮き上がらせる作品122点を展示。あわせて、長谷川が敬愛したルドンや、交流のあった駒井哲郎、丹阿弥丹羽子、小林ドンゲらの作品45点を紹介し、版画家が目指した表現世界を探る。