EXHIBITIONS

開館20周年記念-版の美Ⅳ-

創作版画の系譜 青春と実験の季節

2019.02.10 - 03.24

山本鼎 ブルトンヌ 1920 上田市立美術館所蔵

山本鼎 漁夫 1904(後摺りは1988) 上田市立美術館所蔵

長谷川潔 女の胸像 1914頃 横浜美術館所蔵

恩地孝四郎 わかれとのぞみと3(抒情五種のうち) 公刊『月映』Ⅶより 1915 須坂版画美術館所蔵

田中恭吉 去勢者と緋罌粟 公刊『月映』Ⅲより 1914 須坂版画美術館所蔵

谷中安規 少年画集 2 桜 1933 須坂版画美術館所蔵

 茅ヶ崎市美術館の開館20周年を記念した企画展シリーズ「版の美」は、「版の美−板にのせられたメッセージ」をテーマとして、浮世絵・新版画から現代の版画までの諸相を3回にわたって紹介してきた。最終回では、山本鼎や石井柏亭らによって展開された「創作版画」に焦点を当てる。

 浮世絵や明治・大正期の新版画が伝統的に分業で制作されたのに対し、単なる絵画の「複製」でなく、画家の創意が反映された作品を重視する運動から派生した「創作版画」。また、若い芸術家たちは、当時の海外の芸術思潮を仲間と共有するための手段として版画を使用し、18年に日本創作版画協会、続く31年に日本版画協会が設立された。

 これらの運動の消長の中で、やがて版画がひとつの美術ジャンルとして独立。山本が仲間と発行した雑誌『方寸』、長谷川潔の自刻木版で飾られた詩人たちの文芸誌『假面』、そして大正期文化の精華ともいうべき田中恭吉、恩地孝四郎、藤森静雄の詩画集『月映』などの出版活動においても、版画は重要な役割を果たした。

 本展では、雑誌『明星』(1904)に掲載された山本の記念碑的作品《漁夫》に始まる「創作版画」の物語を、明治末期〜昭和前期に制作された20名の作家による作品約180点によってひも解く。