華影（はなのかげ）　華族たちの絵画主義 ピクトリアリズムを追って

　「華影（はなのかげ）」とは、徳川慶喜・昭武をはじめとする旧大名や公家の華族の、写真愛好者によって刊行された写真集の名称。1902年頃〜08年頃にかけて、掲載写真はすべてコロタイプと呼ばれる芸術作品の複製に適した技法で印刷されており、刊行の趣旨や目的などの記載はなく、発行年月日や発行者などの奥付情報もない。

　公にすることを目的とせず、限られた人の間で回覧されていたと思われる大変希少な写真集。07年より、写真家の小川一真と、洋画家の黒田清輝による印画評と採点が加えられ、当時の海外で広まった絵画的な写真を追求する「ピクトリアリズム」の潮流に乗って、華族たちは技術向上を図り、優劣を競い合いながら写真を楽しんだという。

　本展では、『華影』13冊と、その休刊後に同グループが発行した『富岳集』1冊の中から、慶喜や昭武ら33名の華族による絵画的な写真作品86点を紹介する。