宮崎啓太「あるユートピアの可能性」

　宮崎啓太は1983年生まれ、東京都出身。2013年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート彫刻科修士課程、15年に年東京藝術大学大学院博士課程を修了し、現在はロンドンを拠点に活動。主に、錆びた自動車の排気管やエンジンパーツといった役目を終えた物質を、紙やフェルト、また採取した音などと融合させ、ぎりぎりの均衡を保つ彫刻作品を手がけている。

　また、最近では新シリーズの「ヴァニタス」を発表。ヴァニタスとは、16〜17世紀オランダの静物画の主題のひとつで、とりわけ絵画においてはよく見られ、虚栄の儚さを意図している。

　宮崎は本作において、メタリックで堅牢なケースの中心に車のヘッドライトが据え、その傍に使われなくなった道具、インターネット上で入手した世界の砂、作家の行動範囲の中で選択して拾ってきたものなどを配置。情感を持って、今日も昔も変わらない生活の普遍性の中にヴァニタスの主題を表現した。

　オブジェクトを工芸や彫刻・絵画の歴史的な制約から解き放ち、新しい美しさを探求し、複雑な未来を暗示するかのような作品を生み出す宮崎。rin art associationでの初個展では、2フロアを使って作品を展開する。