EXHIBITIONS

伏黒歩 飛べないかたち

伏黒歩 untitled 2016

伏黒歩 untitled 2016

伏黒歩 untitled 2016

伏黒歩 untitled 2016

伏黒歩 untitled 2016

 伏黒歩(1977生)は2003年に多摩美術大学絵画学科版画専攻を卒業し、鳥や花、木の根といった対象のシルエットを単色の色面を重ねて描く、夜の暗闇に浮かび上がる影絵のような作風の油彩を中心に発表を重ねてきた。

 最初に完成構図を見据え制作するのではなく、キャンバスに向かい筆やパレットナイフを動かし、流動的に作品を作り上げる伏黒は、2013年より油絵具でキャンバスに描く行為同様、陶芸の粘土を絵具と同等に扱い生み出した陶の立体作品「立体画」を発表。そして、集成となった2016年の個展「2011-2016 Featuring Birds」において絵画表現と陶の立体作品の相互の融合を試み、伏黒作品を象徴する鳥の造形は、直接的なシルエットから相互の表現が溶け合った塊のような抽象性の高い表現へと変化していった。

 さらにその可能性を押し進めた今回の新作展では、陶の立体作品や油彩作品の他、水彩作品から着想を得て、アクリル絵具とスプレーを使用し、にじみや絵具のテクスチャーをキャンバスに変換した新たな技法に挑戦した平面作品を展示。「untitled」(Fig.1)では、もはや鳥は置物のようになり静物画のように静かに佇み、鳥であって鳥でない作品からは、絵画の中のモチーフが何を意味するかを考えさせる問題を提起する。

 また「untitled」(Fig.2)はさらに鳥の輪郭も曖昧になり背景と同化し捏ねられていく粘土のように形を失いながら、瞬間を捉える描写ではなく、焼物か古代の壁画を思わせるような永遠のエネルギーがうごめき、普遍的な命が平面に現れている。