EXHIBITIONS

千一億光年トンネル

奥村綱雄、Nerhol、水戸部七絵

奥村綱雄 夜警の刺繍 ブックカバー 2016

奥村綱雄 夜警の刺繍 ブックカバー 2016

Nerhol multiple - roadside tree 004 2016

水戸部七絵 FACE 2014 参考作品画像 撮影=吉峯敦史

 浜口陽三は、1950年代に手さぐりで銅版画の制作を開始し、独自の技法を編み出した。それは銅の板を何ヶ月もかけて繊細に彫る手間のかかる方法だったが、前例のない、光と闇に満ちた神秘的な画面をつくり出し、20世紀後半を代表する銅版画家として国際的に活躍。この夏は浜口陽三にちなみ、未踏の表現を拓いて進む作家3人の作品と浜口の銅版画作品約20点を紹介する。

 奥村綱雄(つなお)は「パフォーマンスとしての刺繍」を、二十年以上続けている。あえて夜間警備の仕事に就き、勤務中の待機時間にひたすら針を動かして、小さな布に1000時間以上の作業時間をかたむける。これは膨大な時間の結晶か、あるいは前衛演劇なのか。7200時間分の不可思議な作品「夜警の刺繍」を紹介する。

 田中義久と飯田竜太によるNerhol(ネルホル)は、レイヤーを用いた洗練された手法で、時間や存在のゆらぎを含んだ形を提示するアーティスト・デュオ。代表作は、3分間連続撮影した肖像写真を200枚重ねて彫刻を施した作品で、人の表層と内面に切り込む作風を特徴とする。今回はこのシリーズの新作と近年作の「roadsidetree」も加え、静かな思索空間を展開する。

 水戸部七絵(みとべななえ)は、顔をテーマに描くスケールの大きな最近注目の若手作家。油彩絵具を時には一日100本以上を使って豪快に塗り重ね、崩れることも臆さずに匿名の顔を描きあげる。絵画として描いているが、作品は立体さながらに盛り上がり、大胆な色彩と質感で迫ってくる。