EXHIBITIONS

大庭大介

2017.05.19 - 06.24

大庭大介 Octopus 2017 撮影=表恒匡 協力=SCAI THE BATHHOUSE

大庭大介 6 2017 撮影=表恒匡 協力=SCAI THE BATHHOUSE

大庭大介 Octopus 2017 撮影=表恒匡 協力=SCAI THE BATHHOUSE

大庭大介 0NE 2017 撮影=表恒匡 協力=SCAI THE BATHHOUSE

 光の移ろいや鑑賞者の立ち位置によって、イメージや色彩が変化し続けるーーー大庭大介は、偏光パールのアクリル絵具を使って、光とともに浮かび上がり消えていく幻惑の世界と、それを見つめる鑑賞者の時間軸とが関係し合い、静かな対話を始める絵画の場を成り立たせてきた。真珠のような淡い輝きを放つ支持体は、光量や視角の変化とともに表情を変え、作品のうちに作家が結晶化した時間が鑑賞者の視覚のなかで再び動き出す。レスポンシブな光の動きやちらつきによって絵画が自ら動き出す瞬間は、光学的な法則に従い調整を繰り返す作家の計算された方法論と、絵具が予期せぬ流れを生む制作時の偶然性によって誕生。5年ぶり3度目の個展となる本展は、現代絵画に見られる多様なアプローチを参照しつつ、これまで大庭が繰り返してきた制作における規則性と偶然性とがせめぎ合う挑戦的な絵画世界となる。

 光そのものを内包してきた大庭のこれまでの明るいタブローに対して、本展では色彩を排除するかのような黒が導入され、大庭の制作における新たな展開を予感させる。黒い絵具を支持体の上に炸裂された《0NE》(2017)や、アクリル絵具に独自の錬金術を加えることで、鉛のように鈍く輝くメタリックな質感を生んだ新作《X》など、絵画を出来事がおこる場としてとらえ直し、色なき世界において行為そのものに目を向けた概念的な作品へと導かれている。自身の制作について「関係、偶然性、光、次元、行為」という5つの視点を挙げる大庭。本展では、光と影を用いて構築性の強い表現を試みてきた大庭が、あきらかな輪郭で行為をかたどる黒を用いて「偶然性」を強化することにより、「間=存在すること」というこれまでの制作主題の更新を図る。