EXHIBITIONS

小林秀雄展

中断された場所 / trace

2018.06.08 - 07.07

小林秀雄 中断された場所 1998 © Hideo Kobayashi Courtesy of EMON Photo Gallery

 20年以上のキャリアを持ち、現在に至るまで綿密に練った仕掛けや光学的な工夫、制作のすべてに8×10フィルムを使うなど自身の写真哲学を貫く写真家、小林秀雄。デビュー作《中断された場所》(1998)では、20枚ものコンクリート壁で廃材置場や公園の遊具などを囲って撮影し、世界から一部だけ切り取られ隔離された風景、また道具としての命を奪われたものたちの墓場のような空間を表現した。

 いっぽう初期作のひとつ《trace》では、絵画の1点透視図法を応用しながら、鬱蒼とした夜の森の中を長時間露光によって撮影。秩序を持った光によって照らし出される森の姿は、現実と写真空間の狭間に潜む「異界」を思わせる。

 コンクリート壁を使った超現実的な世界、そして森の中で多重露光を繰り返して撮影された厳かな作品群。これらは、ドキュメンタリーの要素を残しつつも再構成された架空の空間であり、時間と労力を惜しまずに対象と向き合う小林の姿勢を見て取ることができる。

 本展では、水戸芸術館現代美術ギャラリーでも展示された初期作《中断された場所》、またその次のシリーズである《trace》を紹介。デジタル全盛となったいま小林の作品をもう一度振り返り、未来へと向かう新たな写真の可能性を考察する。