前田征紀「溌墨智異竜宮山水図」

　自身の経験に基づいた精神的な空間を写真や立体、絵画などによって表現するほか、衣服や美術作品の制作、書籍の出版などを国際的に展開する「COSMIC WONDER」も主宰する前田征紀の個展が開催される。

　前田は1971年生まれ。現在、京都北部の谷山に位置する草葺屑屋を拠点に活動。2009年タカ・イシイギャラリーにて初個展「UNIVERSAL LOVE」を行い、その後「MOT コレクション Plastic Memories―今を照らす方法」（東京都現代美術館、2010）、「ヨコハマトリエンナーレ 2011」（横浜美術館、2011）に参加。近年では、COSMIC WONDERとして工藝デザイナーの石井すみ子が率いる美術ユニット「工藝ぱんくす舎」とともに「お水え いわみのかみ とみず」（島根県立石見美術館、2016）、「かみ」（資生堂ギャラリー、2017）を開催し、和紙に使われる「水」や、身近な工芸でもある「和紙」そのものに注目している。

　本展では、アトリエを構える京都北部の里山に伝わる竜宮伝説と、龍についての考察から着想を得た新作のインスタレーション作品を発表。山里にある水、水晶まじりの石、屋根の茅、囲炉裏の灰などを用いた作品群を《溌墨智異竜宮山水図》《溌墨竜宮瀧図》《溌墨水囲炉裏図》のように名づけ、水を通して新しい「波動の光景」の現出を試みるという。