生誕120年 井伏鱒二展

　『山椒魚』『ジョン万次郎漂流記』『黒い雨』などの名作を残した昭和期の日本文学を代表する作家、井伏鱒二。

　1898年広島県に生まれ井伏は、東京府井荻村（現・杉並区清水）に居を構え1927年以後、小説の取材や趣味の川釣りのためしばしば山梨を訪れている。1938年、太宰治を御坂峠の天下茶屋に誘い、結婚に至るまでの世話をし、1944年に甲府に疎開した折にも、その後疎開をしてきた太宰と交流を持った。また、俳人の飯田蛇笏・龍太親子とも長きにわたり親交をあたため、龍太とは40年近く書簡を交わしている。

　「侘助（わびすけ）」「七つの街道」「小黒坂（こぐろさか）の猪」「岳麓点描（がくろくてんびょう）」など、山梨を舞台にした作品も数多く執筆した井伏。本展では、その生誕120年を記念し、文学館が収蔵する原稿、書簡、書画から、下部温泉、増富ラジウム温泉、疎開した甲府など、小説家が山梨各地に残した足跡、俳人の飯田蛇笏・龍太親子との交流をたどる。