THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦

　うらわ美術館で「THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦」が開催される。

　近年、再び注目を浴びている「新版画」。それは版元・渡邊庄三郎（1885〜1962）の試みから始まった。江戸時代に確立された浮世絵木版画（錦絵）は、明治末期になると銅版や石版、写真技術流入の影響により退しつつあったが、その高度な彫りの技術やバレン摺りが生み出す特有の美しさに魅了された三郎は、伝統的な浮世絵の技術と新しい絵画表現との融合を目指した。

　1909年、三郎は24歳で東京・京橋に渡邊版画店（現・渡邊木版美術画舗）を構え、浮世絵の研究や販売を行う傍ら、15年から、来日していた外国人画家の作品の版画化を試み、同時に木清方門下生ら新進気の画家たちを絵師として起用。そして高品質な材料、技術を持つ彫師や摺師、そして三郎の創意工夫と優れた審美眼により、新たな浮世絵木版画となる「新版画」を発表した。

　本展は三郎の精神をいまなお受け継ぐ渡邊木版美術画舗の全面的な協力のもと、残存数が少ない初摺の渡透版を出品。また、日本人画家として新版画第一作を手がけた橋口五葉による装丁本など、当館所蔵作品もあわせて展示する。