江戸の女装と男装

　洋の東西を問わず、古くから見られる女装や男装の文化に焦点を当てた展覧会を開催する。

　日本にも古くから異性装の風俗があり、『古事記』のヤマトタケルが女装をして熊襲を退治した話や、中世の稚児による女装、芸能に見られる女装などが挙げられ、江戸時代にも祭礼で芸者などの女性が男装して出し物を演じ、男性役者が女装して女性を専門に演じる歌舞伎の女形など、男装や女装の風俗があった。

　浮世絵では歴史や物語に登場する人物の男女を入れ替えて、当世風の人物に置き換える「やつし絵」や「見立絵」も多く描かれ、映画『君の名は。』といった男女が入れ替わる趣向の作品が制作される近年に先がけて、既に江戸時代には異性装や男女を入れ替えるという発想が庶民にとって身近なものであったことがうかがえる。

　本展では、月岡芳年、歌川広重、歌川国貞らの浮世絵を通して、男女の境界を自由に行き来する江戸時代の風俗や文化に迫る。