香月泰男展

　戦後美術の原点を見直すべく日本の洋画家を紹介する展覧会を開催する東京画廊＋BTAP。前回の「鳥海青児」展に続き、戦後の洋画家、香月泰男の作品を展示する。

　香月泰男は1911年山口県大津郡三隅町生まれ。31年に東京美術学校（現・東京藝術大学）に入学し、藤島武二に学ぶ。香月の表現に決定的な影響を与えたのが、第二次世界大戦と敗戦によるシベリア抑留であった。47年に引き上げ、翌年からは郷里の三隅町の自宅で制作を始める。

　香月の作品は、53年頃から色数が少なっていくが、渡欧後の58年には木炭の粉を混ぜた新しいマチエールを見出し、光沢を失った土色のキャンバス地が画家の特徴となる。59年以降、50号以上の大作はシベリアシリーズに限定され、74年に没するまで一貫して変わることはなかった。

　本展では、デフォルメを経て抽象へと至る戦後美術の展開を考察。戦後、西洋絵画の前衛的技法が日本に流入し、グローバルな視線と同時に日本固有の風土の認識が生まれるなか、第二次大戦に直接関わった香月と、年長の鳥海との間の異質性と共通性を探り、アートによる記憶の継承に迫る。