EXHIBITIONS

渡部さとる「2Bとマンデリン そして僕はこの町を離れる」

2018.01.05 - 01.27

渡部さとる 2Bとマンデリン

渡部さとる 2Bとマンデリン

渡部さとる アイヌ、いのちの営み

 1961年山形県米沢市生まれの写真家、渡部さとる。渡部は写真事務所のビルの立て壊しのため、上京から37年間親しみ撮り続けた江古田の町から出ることになった。

 本展では、江古田の風景とその変化を通して、自らの「ノスタルジー」に向き合う作品群を展示。本展に寄せて、渡部は次のような言葉を述べている。

「池袋から三駅、小さな町の喫茶店に40年近く通っている。少なくとも週に一度、学生時代は毎日欠かさず、講義に出ない日はあってもお店に行かない日はなかった。辛いカレーを食べ、苦いマンデリンを飲む。
独立するとこの町に事務所を作った。暗室があり、日当たりのいい部屋があり、やがて人が集まる場所になった。僕にとっての東京はこの町のことだった。

2018年、この町を離れる時がきた。事務所ビルが立て替えのため出て行くことになったのだ。

僕はずっとこの町を撮り続けてきた。駅前であったり、商店街であったり、銭湯の煙突であったり。意識は宙ぶらりん、大脳で判断するというより、小脳が反応するように撮ってきた。

ただ、常にいつかはこの町を離れるであろうことだけは分かっていた

松岡正剛はノスタルジーを「取り戻したい故郷が失われたことを巡る感情」と定義した。

この表現こそが「2Bと珈琲」を巡る思いなのかもしれない。」(渡部さとる)