EXHIBITIONS

荒井理行「Like Paintings 005」

2023.11.04 - 11.24

like paintings #66 ©荒井理行

 銀座 蔦屋書店で荒井理行の個展「Like Paintings 005」が開催されている。

 荒井は1984年生まれ。現在は茨城県を拠点に活動し、その作品はあいちトリエンナーレやVOCA展でも発表されている。荒井はこれまで、インターネット上で収集した作品を起点に、そこには写っていないフレーム外の情報を想像して描く絵画を制作してきた。絵具を垂らしてつくられる多層的な絵画空間は、主観により解釈される現実とイメージ、その不安定な移ろいを示唆している。本展では荒井が近年取り組んでいる「like paintings」シリーズより新作6点を、会期中、前期後期の2回に分けて紹介する。

 本展に際し、荒井は以下のステートメントを発表している。

「私はインターネットから他者が撮影した(と思われる)写真を拾い集め、それをプリントアウトしたものをキャンパスに貼り、そこに写らなかったフレームの外を想像で描き足す方法で絵画を制作している。筆による視覚言語を廃し、注射器を用いて絵具を垂らす絵画方法は、絵具は絵具でしかないという物理的側面と、イリュージョンとしてイメージを宿す概念的側面の両方を兼ねることを目的としている。

 画面のなかには、この絵画の始まりとなった写真の『痕』がある。私は写真の外側を想像で描き足した後に、その写真を剥がして捨ててしまう。他者の視点から始まった絵を、自らの視点にすり替えていくように。鑑賞者は私の視点のもととなった写真を知ることはできないが、私もまたモチーフとなった写真が何であるのかを真に理解することはできないという点で、自らの視点と他者の視点を行き来し続ける。

 イメージ(写真)にイメージ(想像)を重ね、イメージ(絵画)をつくり出す一連の所作により、多重のイメージは一度は絵画として定着をみるが、鑑賞者の存在によってそれは再び宙に放たれ、新たなイメージ(像)として結ばれていく。この不安定な移ろいの連鎖のなかに、私は希望に似た何かをみている」。